オランダ農業から学ぶこと

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今、オランダの農業が注目されています。

オランダの施設園芸の生産者人数は1975年より減少し続け、2007年の調査では約半分に減っているにも関わらず、施設栽培面積は2000年まで増加し2007年までほぼ横ばいに推移している状況です。
また、オランダは日本の九州と同程度の国土面積しか無いにも関わらず、人口1人あたりの農地面積は11.6a/と日本の約3倍を誇っています。これは、生産者1人あたりの生産量含め生産効率が高いことを端的に示しています。私たちは、オランダ視察でいくつかの施設や多くの方からのお話しを聞くなかで、改めて先の数字以上にオランダ農業が「徹底して目的志向で合理的であること」を目指しており、その結果として「生産効率化と市場連動」が進んでいることを目の当たりにしました。そうしたオランダの施設園芸の強みは以下の5つのポイントで論じられることが多いと言えます。

①オランダの地政学的立地と整備された5つのインフラの存在⇒交易国家としての歴史・5つ(空港・港・高速道路網・情報網・語学力)

②輸出(加工・中継貿易含む)戦略に則したターゲット市場の存在と流通改革の展開⇒ドイツ・イギリスなどEUの大消費市場への販売

③高収益作物への特化と効率的な大規模化農業経営体制⇒栽培品目の「選択と集中」(トマト・パプリカ・キュウリで野菜生産の約75%を占有)⇒IT・環境制御技術・環境エネルギー利用・生産/労務管理を基本とした経営管理システムの導入

④自立的な産学官連携と農業教育・普及・研究システムの充実⇒フードバレー・グリーンポートを中心とした集積化⇒様々な分野をサポートする農業ビジネス企業やワーゲニンゲン大学UR・農業コンサルタントの存在

⑤歴史的・文化的に形成されたオランダの国民性⇒ポルダー(干拓地)モデルに代表される協働体制や合理的目的志向

こうしたオランダの農業をひと言で定義するならば、「地政学的立地条件や整備されたインフラを最大限に活用した、大規模消費市場向けに形成された合理的・目的志向的な経営生産システム」と言えるのではないでしょうか。

オランダ視察前までは成功事例であるオランダ農業を単純に日本に移行させれば日本の農業にもいいのではないかといった短絡的な考えもなかった訳ではありませんが、視察を通してオランダの施設園芸に学びながら日本特有の在り方を目指す必要があることを強く意識させられました。
オランダ農業のように「規模の経済」を目指す手法として「収量の最大化(=光合成の最大化)」を志向するのは、出口戦略として大規模消費市場が存在することで成立しますが、日本のように「多品種多品目」型の農業を志向するのであれば自ずと「高付加価値」型の栽培を進めるのが当面の方向性ということになると思われます。こうした小規模の生産者を集積化させ、一定のレベルの規模を確保しつつ「範囲の経済」の効果を機能させていく為には、上位レベルでの戦略もますます重要になってくると思われます。一方、「規模の経済」を追求するオランダでは、スペインなどの人件費など生産コストの安い野菜とのシェア争いで生産者の収益が圧迫されることも出始めているようで、今後の方向性にも変化がでてくるのかもしれません。

とはいえ、オランダの農業からは私たちが学ぶべき点がまだまだ豊富にあることも事実です。ITの活用・環境制御技術の高度化・自然環境エネルギーの活用などから、個人の生産者においても生産管理・労務管理システムを含めた経営システムによる効率的な経営がなされている点は「経営力」を高めていく方向性として学ぶところが多くあると言えます。また、それをサポートする産学官の体制・仕組みづくりは大いに学ぶべきところだと考えられますし、そうした点での日本独自の仕組みづくりがますます必要になると思われます。

私たちもそうした仕組みづくりの一翼を微力ながらに担っていきたいと考えています。